エミコ サワラギ ギルバート展
―　不図　―

「不図―はからざりき」

1989年の夏の終わりに、私は家族と共に米国北東部の小さな州、バーモントへ移りました。
「人間を離れ、人間に関わりなく在る世界で、白紙の自分に立ち戻りたい」という積年の惟いを実行したのです。
針葉樹の森に囲まれた小さな家からは、この茜色の夕景や、稜線を染めながら森の向こうからやって来る曙色の朝や、冬には純白の世界が、星空が、広がって在りました。
人家の灯も人間の音もない寒帯雨林での、その後の十数年の始まりでした。朝が来て、夜が来る。人間などには何の関わりもなく営まれる世界。透き徹った闇と降り注ぐ光の中に、時も、私も、言葉も、意味を持たない世界でした。
線によるドローイングは、平凡な日常の暮らしの中で垣間見る、風景や出来事に表象している世界の、“真相”を描きとめようとした作品です。
はからざりき事の結果としての現在に感謝し、その未来を希って 「不図」 といたしました。

2006年11月吉日　　　　エミコ サワラギ ギルバート ：1969 日本大学芸術学部美術学科アドバタイジング専攻卒
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　：1976 渡米・シカゴ・アートインスタテュート美術学校にて研修（彫刻）　

2006/11/4〜11/26
展覧会は終了しました。

潺 画廊
郷倉 伸人
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